ヤミ金融撃退マニュアル(宇都宮健児)|闇金関連文献リスト

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「ヤミ金融撃退マニュアル」の要約

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読者に代わって闇金関係の書籍を読み、要約を紹介しています。

 

皆さんの情報収集にお役立てください。

 

今回は「ヤミ金融撃退マニュアル」(宇都宮健児 著 花伝社 刊)

 

社会派弁護士による対処法の教科書です。

 

 

本と著者

宇都宮健児氏は社会派の弁護士。

 

全国クレジット・サラ金問題対策事務局次長、オレンジ共済事件被害対策弁護団長、日栄・商工ファンド対策全国弁護団、全国ヤミ金融対策会議代表幹事などを歴任しました。

 

「ヤミ金融撃退マニュアル」は初版2002年と古いですが、暴力的なヤミ金融が猖獗を極めた時代の実態と対策を、弁護士の観点から整理した良書です。

 

本の内容

 

1章 激増するヤミ金融

 

1.ヤミ金融とは何か?
貸金業登録の有無によらず、出資法の上限以上の金利を取る貸金業者のこと。

 

昔は無登録が多かったが、正規の業者だと消費者を欺くことと広告を打ちやすくすることを目的に登録することが多い。

 

登録料4万3000円を払えば、登録不許可事由がない限り、簡単に登録できる。

 

65%が登録3年未満を表す、登録番号「都(1)」なので「トイチ業者」とも呼ばれる。

 

「トイチ」は昔は金利を意味したが、現在の金利相場は「トヨン」「トゴ」である。

 

2.ヤミ金融は誰をターゲットにしているか
サラ金やクレジットで返済困難に陥った多重債務者や商工ローンで返済困難に陥った中小零細事業者。

 

こうした人の名簿を不正に入手してDMやFAX、電話、メールなどで営業。

 

スポーツ新聞、夕刊紙、新聞折込広告、チラシ、看板などでも盛んに宣伝。

 

実際よりはるかに低い金利を標榜し、「ブラックOK」「審査なし」などを訴求して集客。

 

自己破産者もよいターゲット。

 

3.多様化・巧妙化するヤミ金融の手口
当時のヤミ金融の業態を整理している。

 

  • システム金融
  • 都1業者(紹介屋、買取屋を含む)
  • 占有屋と提携したもの
  • リース屋
  • 金券金融、チケット金融
  • 年金担保金融
  • 090金融

 

4.暴力的・脅迫的取り立ての実態
闇金はもともとが違法な営業なので、回収に当たっては法的手段ではなく、暴力・脅迫を用いる。

 

本人はもちろん、親兄弟、勤務先、近所の住民、行きつけの店にまで激しい取り立てを行う場合がある。

 

電報、FAX,、手紙などでも脅迫的なメッセージを送付。

 

近所には誹謗中傷のビラを撒いたり、貼り紙をしたりする。

 

この本にはそうした文面の実物写真が収録されている。

 

5.ヤミ金融による過酷な取り立てによる被害実例

 

【解雇された60代バス運転手】
失業し、年金担保金融に引っかかって年金も全額受け取れない状態でサラ金・闇金の借入が増加。

 

青木ヶ原で自殺を試みた時に偶然取材に来ていたテレビディレクターに止められ、弁護士のもとへ。

 

自己破産し、年金も受け取れるようになった。

 

【公園で野宿生活の夫婦】
闇金に借りた配管工。

 

職場への取り立てが激しいのでアルバイトに降格されて減収。

 

アパートへの取り立ても激しいので、出ざるをえず、夫婦で公園で20日間も野宿。

 

その後、自己破産して平穏な生活を取り戻す。

 

【マンガ喫茶難民】
闇金75社から800万円も借りた50代会社員。

 

自宅や勤務先に激しい取り立て。

 

離婚し、カプセルホテルや漫画喫茶を転々としながら勤務先に通う生活。

 

【知らずに闇金に就職した人】
新聞や求人誌の広告を見て応募したら闇金だったが、やめたくてもやめられないという人も。

 

長時間のリンチに遭った上、家族への報復までほのめかされるなど。

 

6.なぜヤミ金融が激増しているのか
要因は3つある。

 

第一に、需要が増えていること。長引く不況で借り入れせざるをえず、正規業者の限度額に達している人は増えている。

 

第二に、闇金が短期間に莫大な利益が上がる商売であること。

 

第三に、警察や行政の取り締まりが極めて不十分であること。

 

7.不十分な警察の取り締まりと行政の監督
恐ろしい被害に遭って110番しても、民事不介入を理由に放置したり、逆に「借りたものは返すべき」と説教したり。

 

占有屋の不法占拠も認めてしまっている。

 

また、違法行為をしている業者なのに貸金業登録を許してしまっている。

 

2章 ヤミ金融撃退法

 

1.ヤミ金融の見抜き方

 

  • ダイレクトメール・FAX・電話で勧誘する業者
  • 新聞折込広告・電話ボックスのチラシ・スポーツ新聞に公告を出す業者
  • 携帯番号しか連絡先がわからない業者

 

上記のような会社はほぼ確実に闇金。

 

加えて貸金業の登録はしているが、更新番号が1の業者も極めて疑いが濃厚。

 

2.ヤミ金融の最大の弱点は犯罪行為を行っていること
ヤミ金融は、出資法違反で3年以下の懲役、または300万円以下の罰金に相当する犯罪行為。

 

彼らは警察に逮捕・摘発されて商売ができなくなることを恐れている。

 

3.毅然として対応し、警察への被害届・刑事告訴も積極的に行う
対策としては下記のようなものがあるので、積極的に検討すべき。

 

  • 弁護士に相談するか、調停・個人再生・自己破産などの法的手続きを取る
  • 取り立て禁止の仮処分を裁判所に申し立てる
  • 慰謝料請求訴訟の提起
  • 監督官庁に対する行政処分(業務停止や登録取り消し)の申し立て
  • 警察に対する被害届・刑事告訴

 

実際に脅迫・暴力があった時は警察も動ける。

 

日栄の元社員は刑事告訴され、有罪になっている。

 

4.ヤミ金融からの借金は返済義務がなく、ヤミ金融に返した金銭は不当利得として取り戻せる
出資法違反の貸付行為は、民法90条の公序良俗違反によって無効。

 

ヤミ金融から受け取った金銭は不法原因給付(民法708条)となり、返済義務がない。

 

借主が闇金に払った金銭は、不当利得(民法703条、704条)となり、返還請求ができる。

 

5.ヤミ金融以外のクレジット・サラ金・商工ローンの債務整理の方法
合法業者に対する債務なので、私的または法的に整理する。

 

任意整理、特定調停、個人再生、自己破産の4つの方法がある。

 

6.ヤミ金融の相談窓口
下記のようなものがある。

 

  • 弁護士会
  • 法律扶助協会
  • 裁判所
  • 被害者の会

 

全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会(略称「被連協」)は1982年に結成された被害者団体。

 

これに加盟する被害者の会が全国に多数ある。

 

3章 ヤミ金被害を根絶するために

 

1.全国ヤミ金融対策会議の結成
商工ローン問題を契機に出資法の上限金利が引き下げられるが、闇金放置だと何の意味もない。

 

宇都宮氏が代表幹事になってこの会を結成。

 

警察や行政に取締り・監督を要請するとともに、「ヤミ金110番」などの相談も実施。

 

闇金問題の解決には次の4つが大切。

 

  • 警察の取締り強化
  • 行政の指導監督強化
  • ヤミ金対策立法
  • 社会保障の充実

 

その上で、「一人一人の被害者の勇気ある告発が世論を動かす」と結んでいる。