ヤミ金融 実態と対策(木村裕二)|闇金関連文献リスト

ヤミ金融 実態と対策(木村裕二)|闇金関連文献リスト

「ヤミ金融 実態と対策」の要約

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読者に代わって闇金関係の書籍を読み、要約を紹介しています。

 

皆さんの情報収集にお役立てください。

 

今回は「ヤミ金融 実態と対策」(木村裕二 著 花伝社 刊)です。

 

弁護士による最新の良書です。

 

 

本と著者

木村裕二氏は、消費者金融や闇金の被害者救済に長くかかわってこられた弁護士さんです。

 

  • 1961年 茨城県日立市生まれ
  • 1986年 東京大学法学部卒業
  • 1990年 弁護士登録・東京弁護士会入会
  • 1996~98年 東京弁護士会消費者委員会副委員長
  • 1996年 KKC被害対策弁護団事務局長
  • 1997年 オレンジ共済被害対策弁護団事務局長
  • 2000年~ 全国ヤミ金融対策会議事務局長
  • 2005~07年 日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長
  • 2006~10年 日本弁護士連合会多重債務対策本部事務局次長

 

「ヤミ金融 実態と対策」は2010年初版で、弁護士によって書かれた闇金に関する本の中では最新の部類です。

 

2006年の貸金業法改正以降、闇金の世界も様変わりしているので、少しでも新しい情報が貴重です。

 

わかりやすく整理された内容でもあり、一番おすすめの本です。

 

本の内容

金融の規制強化をすると闇金を伸ばすだけ、闇金は規制強化が生んだブラックマーケットという説があるが、木村氏はそれに反対の立場。

 

むしろサラ金・商工ローンが生んだ多重債務問題(=市場の失敗)の副産物と捉えている。

 

そして何よりもブラックマーケット論者は闇金が犯罪であることを忘れているという。

 

貸金業法改正以降、貸金業者のために作られた需要の水膨れは改善されてきた。

 

そして、改正以後に闇金の被害は増えていない。

 

一方、経済格差の拡大という構造的問題はより大きくなっており、セーフティーネットの確立が求められる。

 

第1章 ヤミ金融問題の実態

 

1.ヤミ金融とは何か
出資法の上限(業として行う場合は年20%)を超える金利で貸し付けを行う違法業者。

 

警察が暴力団関与と認定しているのは、闇金事件の3割だが、その場合も現場は一般人ばかりである。

 

2.なぜヤミ金融が増えたのか
木村氏の分析によると、理由は4つ。

 

1)儲かるから―少ない資本で圧倒的な利益率。

 

2)お客がいるから―多重債務者は2~300万人いる。

 

3)道具があるから―三種の神器(多重債務者の名簿・他人名義の預金口座・他人名義の携帯電話)

 

4)捕まらないと思っているから―年間事件数は400件前後、検挙人数は800人前後にすぎない

 

3.ヤミ金融の種類
闇金の形態を列挙しているのはよくある内容。

 

ただほかの本と違うのは、時系列の移り変わり、いわば闇金の歴史に触れている点。

 

「ヤミ金融の『種類』と言っても、いつも同じ分類図が適用できるような形で、各種のものが共存している、というわけではありません。ヤミ金融の具体的な犯行形態には、時期によって移り変わりがあります。」(本文16ページより)

 

非常に興味深い内容なので、別ページで闇金の歴史としてまとめた。

 

4.振り込め詐欺との関係
ヤミ金融への取り締まり強化を避けて、2006年頃から振込詐欺へ転業するグループが増えたとのこと。

 

(この年は貸金業法改正の年でもある。)

 

2つのビジネスはノウハウに共通する部分が多い。

 

例えば、他人名義の銀行口座と他人名義の携帯電話という商売道具。

 

そして、営業(闇金では取り立て役、振り込め詐欺では騙し役)と、被害者に振り込ませたお金を引き出す「出し子」を組織的に分断し、出し子をつかまえても本体を検挙できないようにする防衛策。

 

実際、2005年に検挙された振り込め詐欺グループのリーダー「キング」は闇金出身であった。

 

5.ヤミ金融の手口
被害の始まりは電話やダイレクトメールで直接、個別勧誘を受けるのが一番多いパターン。

 

消費者金融などから個人情報が流出している。

 

名簿屋は「多重債務者リスト」「破産者リスト」「大手お断りリスト」などを、1名数十円~百円程度の単価で闇金に販売している。

 

最初から闇金と名乗るわけではなく、サラ金より低利で大口の融資に応じるようなことを標榜している。

 

しかし、実際に借りたいというと「借入が多いから審査に通らない」といって短期・小口の貸付に誘導し、「まず信用をつけてから」という。

 

わずか数万円を貸し付け、法外な利息をつけ、1日でも返済が遅れると脅迫的・暴力的取り立てをする。

 

複数の闇金業者を運営し、同じ客はグループで共有する。

 

借入額、返済状況、弁護士への相談の有無などの情報を共有し、グループ内で次々に借り入れさせて、しゃぶりつくす。

 

取り立ては、五菱会ヤミ金融事件、八尾ヤミ金事件などに代表される苛酷なもの。

 

そして、ヤミ金融には犯罪インフラを提供する周辺業者がいる。

 

他人名義の(飛ばし)携帯電話、他人名義の預金口座、個人情報を不正入手して作られた名簿は「3種の神器」。

 

第2章 ヤミ金融被害の救済

 

1.ヤミ金融の見抜き方
第一に、固定電話がないと貸金業登録ができないので、携帯しか連絡先のない業者は無登録である。

 

逆は必ずしも真ならずで、固定電話があっても無登録の場合がある。

 

これは金融庁のホームページで検索することで、登録の有無を調べられる。

 

第二に、利息を計算して法定の上限と照合する。

 

必ず年利に置き換えること。

 

出資法の利率計算では実際の手取り額を貸付額として計算するので、利息天引きをされた場合は天引き後の金額を元金として計算すること。

 

さらに事務手数料、書類代などのお金を引かれるのが一般的だが、名目によらず元金以外のお金は利息とみなされることが、出資法で定められている。

 

2.ヤミ金融は犯罪である
ヤミ金融との関係を「お金を貸した、借りた」という土俵で捉えるのは間違い。

 

「犯罪者と被害者」という基本線をあいまいにしてはならない。

 

あくまで犯罪とみなして毅然として対応することが大切。

 

3.ヤミ金融には一切払わない―最高裁判例
ヤミ金融の超高利貸付は公序良俗に反し無効(民法90条)。

 

例え、貸金業登録を受けていても同じで、彼らに返還請求の権利はない。

 

利子はもちろん、元金も犯罪の手段として渡された不法原因給付(民法709条本文)であり、返還請求の権利はない。

 

支払った金額は全額賠償請求可能。

 

元本を差し引いて利子だけ返すのは許されないと、最高裁判決(平成20年6月20日判決)が明確に述べている。

 

4.ヤミ金融被害の相談窓口
被害者単独で闇金と渡り合うのは困難であり、下記のような相談先を積極的に利用すべきである。

 

  • 弁護士会
  • 司法書士会
  • 法テラス
  • 被害者の会(被連協、クレ・サラ対協)

 

相談は早めにした方がよい。時間が経つと相手が増えてやっかいになる。

 

また、情報は洗いざらい全部話すこと。

 

「あそこの闇金は良心的で相談に乗ってくれる」「借りてからまだ一度も払ってないから」などの理由で一部の闇金の情報を隠すと、そこからまた傷口が広がる。

 

一切の闇金と完全につながりを断つ必要がある。

 

5.警察への被害届、告訴・告発
警察に行くときは、借金の相談ではなく、被害の届け出や刑事告訴としていくこと。

 

派出所の警官は闇金の教育を受けていない可能性もあるので、行先は警察の生活経済(生活安全)係。

 

闇金の連絡先や取引経緯などもまとめて行くこと。

 

当面の相談相手も聞いておくこと。

 

110番しなさいと言われることが多いが、「現場に来た警官が話を分かってくれない場合、私が今日ここで相談したことを言ってよいか?誰に会ったと言えばよいか?」と聞いておくこと。

 

告訴・告発の内容は次のような項目になる。

 

  1. 出資法違反
  2. 無登録営業
  3. 取り立て規制違反

 

3つ目の取立規制違反は、家族・友人・勤務先など当人以外に取り立て・嫌がらせをしたとか、夜中に来たとか、怒鳴ったり中傷ビラを撒いたなど。

 

110番して警官を呼ぶと今でも「借りたものは返しなさい」など、不適切な対応をされる場合があります。

 

そういう場合は警官の所属・氏名を聞き、教えてくれない場合は外見とやり取りを記録すること。

 

そしてその記録をもって県警本部の生活安全部門に是正・指導を求めること。

 

6.警告電話
闇金の嫌がらせがひどい場合、警察から警告電話をかけてもらうことができる。

 

「個人のためにそこまでできない」と言われたら「『多重債務問題改善プログラム』という公文書でしてもらえることになっているはず」と反論すること。

 

7.携帯電話の利用停止
2005年施行の携帯電話不正使用防止法によれば、警察は犯罪に使われた携帯番号の契約者情報をキャリアに請求できる。

 

そしてキャリアは契約者が本人確認に応じない場合、利用停止にできる。

 

これを求めること。

 

8.ヤミ金口座の凍結
2008年施行の振り込め詐欺救済法は、犯罪利用の銀行口座凍結と残高の被害者への配分について定めている。

 

ここには振り込め詐欺だけでなく、闇金も含まれている。

 

警察に被害届を出す時に口座凍結を要請できるし、弁護士・司法書士は直接金融機関に要請できる。

 

ただし、被害回復分配金は所定の期間内に所定の方法で申請しないと支払いを受けられないので注意。

 

9.被害回復給付金支給手続
2006年施行の被害回復給付金支給法は、刑事裁判でヤミ金融から没収した金銭をそのヤミ金の被害者に分配する制度。

 

手続きの実施主体は検察庁で、2008年7月から2010年9月までこの手続きが16件行われている。

 

10.損害賠償請求訴訟の提起
財産的な損害賠償に加え、慰謝料も併せて請求する民事訴訟を、闇金に対して起こすことも可能である。

 

11.監督官庁に対する行政処分の申し立て
都(1)金融や地元の登録ヤミ金のように貸金業法に基づく登録を受けながら違法行為をしている場合は、登録取消や業務停止などの行政処分を申立て、廃業に追い込むこともできる。

 

12.再び被害に遭わないために
被害者の情報は名簿屋などを通じて他の闇金に流れる可能性がある。

 

それまで使っていた携帯電話や預金口座はすべて解約すべき。

 

そして、闇金を利用するに至った根本原因を振り返り、それを解消することである。

 

第3章 ヤミ金融被害を根絶するために
弁護士の立場で闇金と戦ってきた歴史が書かれている。

 

非常に興味深い内容であって、闇金の歴史のページに収録した。