「弁護士が入ると慰謝料が増えることがある」というのは、弁護士基準(裁判所基準)で請求すると損害賠償総額が増えることを指していることが多いです。
つまり、損害賠償額の小分けがわかっていなくて「慰謝料=損害賠償総額」だと思っている人にわかりやすいように、あえて不正確な言い方をしているわけです。
しかし、本当は慰謝料はたくさんある損害賠償の費目のひとつです。
だから正確に言うと「慰謝料をはじめとする損害賠償額は弁護士が入ると増えることがある」ということになります。
しかし、このページで説明したいのはそのことではなく、「損害賠償の内訳の費目である慰謝料が基準よりさらに増えることがある」という話です。
悪質な運転や態度の悪い加害者の場合などです。
入院と通院の期間から規定の表を使って算出するのが基本です。
しかし、通院が長期にわたる場合、実際の通院日数の3.5倍程度を慰謝料算出用に採用する場合があります。
小さい子供がいる、仕事が休めなくて入院期間を短縮し、通院も十分できなかった、などの事情も割増の材料になります。
生死の境をさまよった、手術を繰り返し受ける必要があった、といった格別の苦痛を味わった場合も慰謝料を増額するのが普通です。
下記のような事情がある場合、慰謝料が増額された判例がたくさんあります。
1.事故原因が加害者の悪質な不注意の場合
下記のようなことが事故につながった場合、慰謝料増額の事由になります。
数百万円レベル増額の判例はたくさんあります。
6番目の「未必の故意」というのは、いわば消極的な殺意です。
必ず殺してやろうとまでは思っていないが、事故の結果、相手が死んでも構わないと思って車をぶつけた、とかです。
2.加害者側の態度・対応が悪い場合
加害者の態度が悪質な場合も慰謝料増額の事由になります。
500万円以上の増額になった判例もたくさんあるようです。
こうした場合、被害者の処罰感情も格別に強いでしょうから、弁護士にしっかり増額交渉してもらいましょう。
3.被害者に特に同情すべき事情が生じた場合
事故原因や加害者の態度が悪質でない場合も、被害者側に特に悲惨な状況が発生していれば、慰謝料増額の事由になります。
1番目の例としては、事故でレントゲンを撮った後、妊娠に気づき、先天異常を恐れて中絶した事例があります。
後遺障害を負えば、多かれ少なかれ将来の夢に制限がかかります。
しかし、特に明確な夢があり、実現の蓋然性があったと判断される場合、増額につながりやすいです。
3番目の例では、婚約破棄や離婚の原因が事故であるという、因果関係の証明がポイントになります。
4番目の例は、障害児を抱えた母親が事故で自分自身障害者となり、子の面倒をちゃんと見れなくなったような場合です。
客観的に見て人生に重大な影響を与えうる負傷なのに、逸失利益があまり出ないという場合があります。
例えば少女の肌に醜い痕が残った場合や、若い男性が睾丸や勃起能力を失った場合です。
これらは手足の欠損などに比べて後遺障害等級は低くなるので、逸失利益は不当に低くなってしまいます。
といって、等級や逸失利益の計算をいじると、他の事案で大きなひずみが生じてしまいます。
そこで「逸失利益の計算を曲げるわけにはいかないが、慰謝料を増やして調整しよう」ということが行われる場合があります。
類似の状況で逸失利益に納得いかない場合、ぜひ弁護士に調べてもらって、この面から交渉しましょう。