携帯電話が普及し始めた頃、それを利用した闇金の呼称です。
店舗も固定電話もなく、携帯・スマホの番号を書いたチラシで集客し、現金を届けにくる業態でした。
宅配金融、スピード金融とも呼ばれました。
金利は他の闇金より高く、最高はヒイチ(1日で1割)にも達します。
史上最も高金利かつ悪質な闇金で、ガラケーの普及とともに激増しました。
当時はまだ店舗を構えた闇金があったのですが、今はすべてスマホ経由での取引になっています。
つまり、現代ではすべて「090金融」の形になったともいえます。
ただ、お金のやり取りの方法や集客方法は昔と今では違います。
貸し出す相手で一番多いのはパチンコ好きでした。
ヒイチはとんでもない金利ですが、3万円借りて翌日3万3千円返すことは、パチンコマニアには容易に思えます。
実際、パチンコが当たった場合は稼ぎはそんなものではないですから、簡単に思えてしまうのです。
しかし、負けて返済できなければ、1日経つごとに金利が爆発的に増えていきます。
そのため、いったん090金融に手を出すと非常に高確率で破滅に至ります。
住宅街の電柱にもチラシを張って、パチンコギャンブラー以外にもターゲットを広げました。
チラシをパチンコ屋の自転車や自動車に撒き、電話があると店まで金を届けてくれました。
貸出金額は3~5万円。
審査はなく、無収入無貯金だろうが、ブラックリストに載っていようが、破産者であろうが、無条件に貸してくれました。
これは生身の人間が一人いたら、数万円の小額投資に見合ってあまりある取り立てを確実にできると考えているからにほかなりません。
免許証や保険証の確認程度はしますが、契約書なども作りません。
極端に非合法な金融だから、最初から契約書などというものに依存する気がまったくないのです。
そして取り立てに圧倒的自信があるということも意味します。
ズバリ言えばヤクザ金融がメインでした。
ちなみに上限が5万円なのは理由があり、いよいよ返済不能になった時に生活福祉資金を使うためでした。
生活に困窮すると、各自治体の福祉課で以前より簡単に生活福祉資金5万円借りられるようになっています。
「しようがねぇ。利息は負けてやるから現金だけでも返しな」と恩着せがましく言ってこのことを教え、それで返させるのです。
まあ、それで済めばまだ良心的です。
人身売買的手法、臓器売買、女性であれば風俗に沈めるなどの回収方法も普通でした。
闇金の1形態であった「090金融」ですが、今では携帯電話を利用しての取引が主流になり、店舗で対面取引する闇金はいなくなりました。
これは2010年の改正貸金業法で取り締まりが厳しくなった影響です。
集客はチラシではなく、SNSを中心とするネット集客になっています。
お金のやりとりは完全に銀行振込になりました。
お金を届けに来るのではなく振り込んでくるし、返済も相手口座への振り込みで行います。
相手は違法に購入した他人名義の銀行口座を使用し、振り込まれたらすぐに出し子に出金させます。
摘発されて口座が凍結されても残金があることは稀で、どんどん口座を使い捨てていきます。
取り立て方法は、今は相手の信用を毀損する手法が主流です。
借り手の自宅に出向いたり、乱暴なやり方は稀になりました。
そういう意味で、適切な対処をすれば闇金被害の解決は昔より簡単になっています。
事件が起きないうちは警察は動いてくれません。
もし被害に遭われているなら、ぜひ法律家に相談してください。